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第2話 Moe Keale Magic -2

 ここで語ることは時期が前後していて、必ずしも起きた順番になっていないことを言っておきたい。従って1話ずつ完結している。しかし話しが進むにつれ、全ての出来事がリンク、つながっていることに気づく人もいるだろう。そして果たして何十話、何百話書くことになるのか、私にもわからない。
 2004年10月30日オアフ島マノア地区は40年ぶりの豪雨に見舞われストリームが氾濫、道路は川状態になり、約30台の車が流されマノア地区の家々は水浸しになった。この洪水で最も被害の大きかったのはハワイ大学だった。構内の空調の元がやられ、図書館の本は泥水に浸っただけでなく、湿気であっという間にカビだらけになり異臭を放ち、再開の目途もたっていない状態だ。古いハワイの地図類はほとんど壊滅的で、全ての被害総額は8~10億ドルと言われている。
 さて、川と化した道路で流された車の1台になんと!うちの車も入っていた。アメリカ本土東海岸からわざわざハワイに持ってきて14年間大切に乗っていた主人の思い出深い愛車はついに廃車となってしまった。ここまではとても悲しい話しだった。
 数日後、レンタカーに乗っていた私たちは前向きに考え、車を買い替えることにした。主人はディーラーに行くにあたり、私にアメリカの車のセールスマンについてアドバイスをした。ディーラーに着き車を見始めたとたん、すぐさま飛んできたセールスマンに私はアドバイスされたとおり「ちょっと見ているだけ」と買う気のない様子であしらった。しばらく見て回ると、次にやってきたセールスマンと何故か主人は自然に会話を始め、ある1台を試乗することにした。ハイウェイを走らせながらサーフィンのボードをどう積むかの話しになった。すると、もう60歳になるというセールスマンもサーフィンをするという。話しが進み、共通のビーチボーイ友人がいることがわかり、彼は趣味でウクレレを弾き、ハワイアンを歌うという。それならとMoe Kealeを知っているか聞いてみた。セールスマンはとても感慨深げに「彼は本当にすばらしかった。惜しい人を亡くしたよ...」と語った。そして私が「実は私はMoe Kealeのハナイドーターなんです」と言ったとたん、彼は「Oh! My Goodness!」と叫んだ。「Moe Kealeの亡くなる数ヶ月前、シェラトンに演奏を聴きに行き、終わったあと彼と話しをした。そのときにMoe Kealeが日本人の養女がいると言っていたんだ。それがあなたか!」こう言った。運転していた主人も私も思わず耳を疑った。初めて会ったセールスマンと主人と私の3人はこの偶然に感動し、興奮したまま試乗を終え戻ってきた。もちろん面倒くさい値段交渉をすることなく購入に至ったことはいうまでもない。そのまま乗って帰ることになった車の中、パーキングから道に出たと同時にラジオからMoe Kealeの歌が流れてきた。今まで何回も起きているこの"何かのメッセージ"を聴きながら、私たちは目を潤ませていた。Moe Kealeは最初の心臓発作から復帰して亡くなるまでの1年間にも後々の複線となる行動をいくつも起こしていた。そのたびに単なる偶然ではなく、Moe Kealeの特別なManaがそこにあることを皆が感じていた。
 ハワイの自然に宿るというManaも真のAlohaもハワイアンだけのものではないことをMoe Kealeは言っていた。嘘やエゴ、虚栄、おごりのあるところにManaは無い。ManaはPonoのあるところにしか宿らず、神を欺く行為の存在するところにそれらは無い。これは人間が忘れてはいけない真のハワイアンの英知でもある。
by ohanaokeale | 2005-05-14 21:02


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