<   2007年 01月 ( 1 )   > この月の画像一覧

第9話 夢

 巨大な水槽は何故かステージの上にあった。すると水槽の横に突然 Moe Keale が姿を現し、これからこの水槽に飛び込むという。Moeさんの髪型は昔の“Aloha Is”のジャケットの時の短いヘアースタイルだった。 
 Moeさんは水槽についているはしごをゆっくりと登り、息を大きく吸うと水槽の中にダイブした。とても一人の人間が飛び込んだとは思えない程の大量の水が、大きな水しぶきと共に溢れ出した。その瞬間、しぶきの真ん中から甲羅をこちらに向けた巨大な Honu (ウミガメ)が垂直に、高く、真上に飛び出した。見たこともない大きさの亀だった。
 びっくりした私は目が覚めた.....。夢だったのだ。そしてすぐさま頭に浮かんだのは、Moeさんに何かあったのではないか?ということだった。2001年3月、Moe Keale が最初の心臓発作で倒れて入院中のことだった。
 私は急いで飛び起きて電話をした。すると電話に出た人が「Moeさんは?!」
という私の慌てた問いかけにいきなり笑い出し「何てミカはタイミングがいいの、今、退院して家に帰り玄関を入ったところ!」と言うではないか。Moeさんによろしくと伝え、私は電話を切った。肩の力が抜けて心からホッとした。
 しかし、“ Moeさんが Honu になった”この夢についてしばらくの間、心にひっかかっていた私は、後に Moeさんに手紙を書いた。そしてその後この夢の話を数人の、ある特定の人だけに話した。彼らは、こう言った。
「そう、Uncle Moe は Honu になったんだ。ミカが夢に見た時にね。だから死ぬまでの一年間、それは仮の姿だった。」
「 IZ も Honu になったんだよ。彼のビーチ葬の時にもそれは巨大な Honu が突然海面に現れたっけ.....」そう言えばMoeさんのビーチ葬の時も、沖へ出たカヌーのうち、最も腕の確かなMoeさんの友人が舵取りをしていたカヌーがいきなりひっくり返り、皆が驚いた。あとで話を聞けば、急にパドルがコントロールできなくなったので海の中を見ると何と巨大な海亀がパドルをくわえていたというのだ。これらは誰の作り話でもない、事の意味については後に書こう。
 さて4月に入り、Moeさんはシェラトンワイキキホテルのステージに復帰した。2001年4月22日の夜、忘れもしない夜の出来事だった。
 Moe Keale はステージの中盤を過ぎたあたりでいつものように自分のステージに私を呼んだ。そしていつものように私に踊る歌を指示した。しかしひとつだけいつもと違うことが起きた。
プールサイドのステージ中央で曲が始まるのを笑顔で待つ私を紹介する Moeさんの声が「She is Mika.....Keale!」と低く、大きく響きわたった。驚いた私が思わずMoeさんの方を見ると、真剣で、深く暖かい眼差しが私に向けられていた。涙が出そうになったのでチラッと見ただけで私はすぐにまっすぐ前を見て、曲のスタートを待った。この時に踊った曲を私は思い出せない。演奏が始まり私は踊り出し、いつものように終わったあと“Moe Keale Trio”のところにお礼を言いに行った。いつもより時間がとても短く感じられた。公の場で、Moeさんが“Mika Keale”と紹介した初めての夜、だった。
 1997年にハナイ(養女)となってから、私も公ではその事実をとりたてて言わずにいた。Moeさんは私への手紙の宛名に“Keale”と書いて来たし、顔を逢わせる度にわざわざ「ミカ、名前は何ていうんだ?」と聞き、「私の名はミカケアレです。」と答えさせては豪快に笑いながら私の背中をポンポンと叩いては喜んでいたが、周りにはとても慎重であった。何故なら Moe Keale が特別な人であることで、私に対する嫉妬や中傷を警戒していたからだ。私は常に、何故自分をハナイする必要があったのか?自分は何をしなければならないのか?それらを理解することに頭と心を働かせることのほうが重要と考えていた。
 Moeさんが奇跡的に命をとりとめた後、復帰したステージで敢えてこのような場面を作った特別な意図を、その後に起きた様々な出来事を通して、答えが見えてきた今、理解することができる。
 ”モエケアレ トリオ“のところへ行った私にまずいちばん手前にいた Analu が何故か「オメデトウ!」と声をかけ、Mel は「ミカケアレサン!」と言った。そして最後に Moeさんは黙って私を抱きしめた.......。
今でもこの夜の出来事を、この光景を見ていた生徒と話すことがある。
もしこれから先、この瞬間にシェラトンワイキキホテルのプールサイドに居合わせた見ず知らずの人と Moeさんの話をすることがあったら、それはとても不思議な、感動的で素敵な偶然に違いない.........。
[PR]
by ohanaokeale | 2007-01-15 00:26