第13話 ニイハウ オハナ その1

 この一年間に、私はこれまでにまだ出合うことのなかったオハナ、ハワイの家族に対面することとなった。もちろん今までと同じく、偶然が偶然を呼ぶ感動的な出会いばかりだった。
 2006年の秋頃だった。生徒の一人の結婚が決まり、結婚祝いに思いついた、“とあるもの”が私にある人物との素敵な出会いをもたらした。
 正直に言って生徒の結婚式の出席は全員となるといろいろな意味で極めて難しいものだ。ある日のお稽古のあとふと、彼女のお付き合いしていた人について元気か尋ねてみた。すると彼女は少し驚いた顔をして、実は12月に結婚が決まったこと、私にお式に出席してもらいたいが困らせてしまわないかと言い出せないでいたことを話し出した。
 その様子はいかにも、いつも相手の心を思いやり、気配りをし、控えめな彼女らしい態度だった。私は頭の中で予定をチェックし、出席の返事をその場で告げた。嬉しそうに帰った彼女は、すぐにお礼と自分の気持ちを綴ったメールを送ってきた。
 今までにも彼女が悩んでいたり迷っている時に限って私が話すきっかけになる言葉をかけたり、解決の糸口になる話を自然にしたりということが頻繁にあった。彼女はその度に、何か縁があるのかもしれないと偶然を心から喜んでいたが、今回も同じだった。
 さて、私が贈り物に思いついたのは 私のハワイの父、モエ・ケアレに由縁するNiihau島の宝とも言えるニイハウシェルのネックレスだった。自然の産物としての希少価値はもとより、細工の技術、美しさは類を見ない特別なレイで、高価であるだけでなく、何より観光客の訪れることのできないこの島に暮らすハワイ先住民の心が宿る、品なのだ。
 博物館やハワイのアーチストの作品や特産物を扱う店でも購入できるが、これで生計を立てる島の人のことを考えると直接買うほうが良いと思った私は、ハワイの家族の中で、最も信頼しているモエさんの甥の一人に相談をすることにした。
 二日後には私は日本に戻る予定だったが、なんと丁度その前日にニイハウの家族が用事があり偶然にもホノルルに来るというタイミングの良さで、レイを持ってきてくれることになった。しかも、今までずっと自然に会うチャンスを待っていたニイハウのおばさんに会えるという、私にとってまさに一石二鳥の出来事に心は弾んだ。
 さて、待ち合わせのホテルのロビーで顔も知らないおばさんを待った。どんな人か、どんな顔なのかをあれこれ勝手に想像しながら時間は経った。すると電動の車椅子に乗りムームーを着た小柄な人が微笑みながらこちらに近づいて来た。お互いを確認し合い、私達は抱き合った。
 彼女は娘夫婦を伴って来ていた。早速、娘夫婦が徹夜で仕上げたというレイとイアリングを見せてくれた。ニイハウシェルの中でもとりわけ小さいkahelelani(カへレラニ)という貝でできた見事な美しさに息をのんだ。そして値段を尋ねるとおばさんと娘は早口なハワイ語で何やら相談を始めた。大学で学ぶようなスタンダードなハワイ語とは全く異なる、ネイティブのハワイ語だということは私にも解ったがもちろん何を言っているかは理解不能だった。
 そして、言われた通りの金額を渡し、お礼を言った。一緒に食事をした後、別れ際に私の顔をじっと見ていたおばさんが言った。「あなたはまるで少女のような人ね。でも心の中に強いものを持っている。あなたのような人、好きよ。」
そして今度カウアイに来なさい、二イハウシェルレイの作り方を教えてあげるからとニコッと笑った。いろいろな思いが込み上げて来て涙がこぼれた。
 初めて会った私を分析して、それを口にしたこのおばさんがいっぺんで大好きになった。なぜならこの人に嘘はつけないからだ。私は嘘をつかない人間だから、人の心を見抜くこういう人こそ安心なのだ。モエさんも同じだった。
 自分に都合が悪くなると作り話をしてまでも、人を悪者にしようとする人たちの狡さにうんざりしている私は、このおばさんに出会わせてもらえたことは天の助け、の気持ちだった。おばさんは、会う理由があって私たちは出会った、とも言った。その通り、このあとおばさんとの付き合いは私にますます特別な出来事をもたらすこととなった。
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by ohanaokeale | 2008-01-15 00:14


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